ハーモニズム
名詞 重要ワード ★造語 ハーモニズムHarmonyism
ハーモニズム(調和主義、英:Harmonyism)とは、自然・人間・社会・技術のあいだに生まれる関係性やバランスを、美的かつ俯瞰的な「調和」として再設計しようとする思想である。対立や支配ではなく、循環・共鳴のコミュニケーションのなかに価値を見出す。資本主義や共産主義をはじめとする従来の人間中心的な思考枠組みに対し、調和主義は自然を母体として、エコシステムの一部を構成する一種族としてヒトの在り方を説くものである。
起源と背景
「Harmonyism」という語は、英語 harmony(調和)と接尾辞 -ism(主義)を組み合わせた、琴川夕星による造語である。既存の「harmonism(和声主義)」とは異なり、価値・創造・教育・哲学・倫理などを横断する体系思想として用いられる。 21世紀的課題である環境問題、社会分断、情報過多、精神疲弊の時代において、ハーモニズムは人間中心から自然中心へのパラダイムシフトを提唱する。人間を支配者ではなく、自然界における動的平衡の一部として再定義する“超長期的な循環思想”のプロトタイプである。
資本主義との関係
資本主義(Capitalism)が「数値的成長と競争による価値創出」を目標とするのに対し、調和主義(Harmonyism)は「精神的成熟と共鳴による生命循環」を志向する。 数値で測れない豊かさ──美意識・幸福・感動・自然との共生・循環・物語性・セレンディピティなど──を新たな思考軸とする思想であり、近代〜現代における貨幣経済を否定するのではなく、通貨以外の価値を信じられる社会圏を増やすハイブリッドモデルである。 したがって、調和主義は資本主義を含む既存の思想を革命的に覆そうとするものではない。むしろ、一部の制度や体制を維持しながら共存・並走し、バランスを再検討・再設計するための思想的触媒として提示される存在である。特に、資本主義が取りこぼしている数値化できない豊かさを掬い上げるための役割を担う。
この世界は論理のみでできていないし、つねに変化しているのに、ヒトはなぜかこの宇宙の断片をロジカルに説明できると信じている。
教育について
ハーモニズム社会における教育は、「競争」ではなく精神的成熟・共鳴・循環を志向する。 その素養は次の三段階に整理される。
- 【己】自分の美意識を知る(内省・芸術・哲学)
- 【他】他者との違いを知る(言語・論理・対話)
- 【共】他者を受け入れ、尊重する(思想・メタ認知・共感)
これらを通じて、個人の自由は“自分の美意識への責任”として位置付けられ、社会は「多様な美の共鳴圏」として成熟していく。 判断基準は、「なにが正しいか」ではなく、「なにを美しいと思うか」にある。美意識(=美しさを自覚すること)は絶対的なものであり、本来比較の対象ではない。したがって、美意識によって動機づけされた行動が不本意に他者を傷つけたり、または故意の破壊行為を正当化することにも繋がる。調和主義においてはこういった行動プロセスを一時的な不調和として容認し、その正当性は時間による淘汰や自然の自浄作用によって洗練されていくものと考える。
この世界に間違いというものは存在せず、すべての現象が美しいという前提に立つ。もしその美の正当性や強さと測るとするならば、それは「より長く存続したもの」というものさしが挙げられるだろう。ヒトという種族はまだあまりに幼く、未熟で、自然界における赤子のような存在だ。
大きいコンパス・小さいコンパス
「大きいコンパス」とは、人間中心の短い時間軸(週・月・年単位)ではなく、100年〜億年という長期的な時間軸において、地球上に棲まう生命としての進むべき方向を指し示す美意識のメタファー。 現代社会における「小さいコンパス」が経済合理性や自己生存に基づいた短期的な指標であるのに対し、「大きいコンパス」は“自然界における循環と全体調和”を根源的な原理とする。
小さいコンパスの限界と迷走(パラダイムの細分化)
現代社会で用いられる「小さいコンパス」は、1ヶ月や四半期、長くとも10年単位の人間的・限定的パラダイムに閉じている。この短い時間軸においては、個々人の持つコンパスが多様化しすぎており、同じ方向を向くことが極めて困難である。また、環境の変化に弱く、今日「北」を指していた針が、翌週には「南」を指すといった不安定さを孕む。この不確実性が、現代人が路頭に迷う根源的な要因となっている。
種としての幼さの自覚(時間軸の拡張)
ホモ・サピエンスの歴史は約20〜30万年と若く、種としてはいまだ「幼年期」にある。一方で、数億年の歴史を生き抜いてきた植物、昆虫、微生物といった自然界の先達は、永続するための術(アルゴリズム)を既に獲得している。「大きいコンパス」とは、ヒトよりも遥かに長い時間軸を持つ存在に学び、自らの視座を数万年単位まで拡張することを目指すものである。
循環と調和のメタファー(根源的な共通言語)
「大きいコンパス」が指し示す方向は、自然界の基本原理である“循環と調和”である。個体の生命活動が終わり、分解され、他者の養分となって次代へ繋がる「贈与の連鎖」こそが、時代や流行に左右されない唯一の共通言語である。この美しい循環のなかに自身を位置づけることで、短長期の利害を超えた本質的な「北」を捉え続けることが可能となる。そしてこれは物理的な循環のみにとどまらず、精神的な波の伝播においても同様に適応される考え方である。
真理探究と集合的な悟り
精神的成熟を深めていく行為は、すなわち真理を探究することと同義である。そして、真理探究が進み精神的成熟が後期に入ると、「悟り」のフェーズに入る。 「悟り」とは、あらゆる環境変化や課題を全方位的に解決できる状態を指す。物理的・精神的な課題を「ポジティブに転換できるスキル」と言い換えることもできる。仏教における「涅槃」の境地。 調和主義の最終到達点は、すべての生命がそれぞれの位相で悟りのフェーズへと入り、互いに共鳴しながら「集合的な悟り」を形成することにある。このとき、すべての個体が自動的に「宇宙化(うちゅうか)」を遂げる。
悟りとは本来、個として到達するものではなく、みんなでひらくもの。
真理とその性質
ハーモニズムにおける「真理」とは、固定的な“答え”ではなく、あらゆる生命がそれぞれの環世界において“確かめていくもの”であり、その総和が真理の輪郭を成してゆく。つまり、真理とは辿り着くものではなく、たえず変化し続ける世界のかたち自体である。(※言語で定義するには不十分) 地球上に存在する生命を分類せずに、系統樹(「生命の樹」とも言われる)が唯一の生命と仮定するならば、過去を生きた存在が枝や幹となり、今を生きる生命は系統樹の葉や根っこの先端であり、未来の生命はつぼみのようなもので、過去・現在・未来のすべての存在が系統樹の探究真理に寄与している、と捉えることもできる。(→集合的輪郭・コロニー理論) それぞれの種が異なる環世界をもち、かつ時空間の座標を重ねられないため、個として真理の全容を把握することができないという性質をもつ。 →仏教の唯識思想における、『阿摩羅識(あまらしき)』と同義。 →「世界のイデア」と言い換えることもできる。
カエルにはカエルの、トンボにはトンボの、石ころには石ころの、ドビュッシーにはドビュッシーの環世界があり、その他あらゆる存在が存在すること・したことによって、真理の輪郭が形成され、そして次の瞬間には全く別のかたちに変わっている。
集合的な悟りを実現した世界線(予想)
真理探究には果てがないため、すべての存在が常に継続して確かめ合っている。 その上で人類を含むあらゆる存在はなにを存在意義とするだろうか。 そのひとつは、「遊び」にある。 喜びや悲しみといった感情の揺れ動きを観察すること、意味を求め、逆に意味を求めないこと、制限すること、勝敗を決めること、表現すること、分断すること、共鳴すること、負荷をかけること、混ぜる・掛け合わせること、越境すること、問題を生み出し解決すること──物理的なものから精神的・概念的なアプローチ、人間社会で帰結する狭い営みから、他の種族にも影響を与えうる広いコミュニケーションまで。ときに静かに、ときにダイナミックに。 二極化せず、ときには両方を同時並行的に。スペクトラムな変数のなかであらゆる可能性を観究し、遊びとして実践し続けると推測される。 この世界線においては、種や星の滅び、宇宙の終焉さえも遊びの一過程として内包される。
集合的な悟りを実現した社会像は、いわゆる聖人たちのコミュニティというよりも、みんなが子供のように純粋に遊んでいる学校のような状態に近い。
遊びの具体例
遊びとは、世界に対する存在表明であり、振動や概念を顕在化させる行為である。 さまざまなレイヤーの波が互いに共鳴しあって、際限なく伝播してゆく。
例:言語表現
俳句や詩などの言語表現は、言葉という意味性・記号性を扱う以上、その言語を扱わない民族またはヒト以外の存在には伝達の情報量が下がるが、その詩を受け取った人たちの心に響き、それが巡り巡ってヒト以外の多くの存在に無限に間接的な影響を与えうる。
例:音楽表現
音を奏でる行為、すなわち音楽は振動と周波数を扱う遊び。波で構成される世界においては、種族を超えてすべての存在に直接的な影響を与えうる。
人間の言葉が「符号化された遊び」だとすれば、音は「全生命が読める共通言語」である。
言葉は翻訳を必要とするが、音は振動で直に伝わる。だから、詩は局所的に、音は普遍的に、どちらも世界を動かす波になる。
MOONによる実践領域
MOONでは、
- アウト・オブ・コントロール(思い通りにできない)
- 自然という無限の変数を加える
- 時間を鑑賞する
という実践理念のもと、下記のプロジェクトが展開されている;
- TIME & SPACE ™︎(タイムアンドスペース) 自然と人間の即興的共鳴を記録する音の哲学。
- Sonobjet™︎(ソノブジェ) ヒトが奏でない楽器。風や自然現象が演奏者となる装置。
- Yachiyo™︎(八千代) 途方もない未来時間を想像・可聴化する装置。約23.5万年後にすべての音が同時に鳴るというコンセプトのタイムアート。