調和
名詞 重要ワード ちょうわHarmony
調和(ちょうわ、英:Harmony)とは、あらゆる変数を内包しながら、それらが相互に関係し合い、ひとつのバランス体として成立している場のこと。到達すべき状態ではなく、「常に成立している」という性質を持つ。
一般的な定義〔通説〕
全体がほどよく釣り合い、まとまっていること。ただし語源を遡ると、この言葉は二重に音楽でできている。「調」は調律・調べ・長調短調の調であり、「和」は和音・和声の和である。 西洋の harmony の語源、ギリシャ語 harmonia の原義は、音楽でなく、大工仕事である。harmos(継ぎ目・接合)に由来し、船板や木材を組み合わせて一つの構造にすること——異なる部材を、異なるかたちのまま噛み合わせる技術を指した。 哲学者ヘラクレイトスは、調和の本質を「弓と竪琴」に見た。弓も竪琴も、逆向きに引き合う張力があって初めて機能する。見えない緊張こそが、見える調和を支えている——「反対に引き合うものの調和(palintropos harmonia)」。なお、ギリシャ神話の女神ハルモニアーは、軍神アレスと愛の女神アフロディテのあいだに生まれた娘である。調和は、神話の系譜においても、戦と愛の子である。
調和は、同じになることではない
全員が同じ音を出すことを、音楽はユニゾンと呼ぶ。ハーモニーとは呼ばない。和音は、異なる高さの音が、異なったまま同時に鳴ることでしか生まれない。 調和が生まれるときの素材は、差異である。差異を消して得られるのは調和ではなく、平等や均質である。調和とは、振れ幅を潰すことなく、振れ幅同士の関係を内包しながら、メタな次元で常に成立している場である。
同じ音では、和音にならない。
調和は、状態というより「場」に近い
調和はしばしば、均衡の取れた静けさ——完成し、もう動かない状態として想像される。しかし、調和は静止点ではない。拡張と収束、合成と分解(→動的平衡)、逆向きの力が引き合い続ける拮抗(争いや淘汰)、万物は変化し続けるという宇宙の摂理さえも、設定として織り込み済みの場そのものである。 アリとハチが縄張りを争うのも、植物が日照面を競い合うのも、人間同士が戦争するのも、核廃棄物やスペースデブリが溜まっていくのも、これらは不調和なのではなく、自然の摂理に則った調和の一側面といえる。場は、何が起きても破れない。起きたことのすべてを、次の釣り合いの素材へと循環させる。 なお、波界があらゆる関係がそこで結ばれる次元そのものを指すのに対し、調和とは、その次元がどの瞬間にも保っている釣り合いの相を指す。場所の名ではなく、場の性質の名——ゆえに調和は、状態というより「場」に近く、厳密には、場が決して手放さない性質である。 ゆえに世界調和とは、いつか到達される未来の状態ではなく、いま現に、ゆらぎながら保たれ続けている場である。
世界平和が目指すものであるのに対し、世界調和は気付くもの。(→ハーモニズム)