諧玄文学 / Nonsensophy
第2話※本日より、重力は予約制となります
市役所の掲示板に、重力の利用方法が変更されたことを知らせる紙が貼られていた。来月から地面に立つには事前予約が必要で、無断で着地した場合は三十分ほど浮かされるという。これに対し、市民団体は「空中には椅子がない」と抗議したが、市長は「椅子については現在育成中です」と回答した。実際、市役所の中庭では大量の椅子が苗木として植えられており、順調に育てば秋には立派なソファになる予定だった。ところが、その晩、すべての椅子が一斉に南を向き始めた。専門家によると、これは椅子の渡りが始まる前兆だという。翌朝、空には数千脚のパイプ椅子が群れをなして飛んでいた。先頭の一脚が突然「議事録を取ってください」と鳴くと、街中の時計が一斉に午後三時を辞職した。白い髭を生やした時計職人たちは慌てて新しい午後三時を製造したが、完成したのはどう見ても木曜日だった。仕方なく木曜日を時計に取り付けると、今度は月曜日が二度訪れるようになった。市民から苦情が殺到したため、市長は重力の予約制度を撤回した。しかし、すでに予約していた三百人だけは、今でも地面に対して少し優越感を抱いている。