諧玄文学 / Nonsensophy
第1話『海を折る仕事』
その町では、毎朝六時になると海を畳む習慣があった。漁師たちは水平線の端を丁寧につまみ、波がしわにならないよう四つ折りにして倉庫へ運んだ。海のない昼間、魚たちは空中をゆっくり泳ぎ、港では船が地面に影を落としながら眠っていた。ある日、新入りの漁師が海を裏返しに畳んでしまった。すると、昨日まで海底だった場所に巨大な空が現れ、雲の骨が何千本も突き出していた。町長は緊急会議を開き、「空は海の一種なのか」と議員たちに尋ねた。議員たちは全員、靴の中に小さな夕焼けを飼っていたため、答えることができなかった。代わりに七十九歳の時計職人が立ち上がり、「昔は時間も洗濯していた」と証言した。誰も関係があるとは思わなかったが、その発言は満場一致で可決された。夕方、漁師たちが海を広げ直すと、見知らぬ老人が一人、波のあいだから転がり出てきた。老人は濡れた帽子を絞りながら、「すみません、これは何年前の海ですか」と尋ねた。漁師は答えられなかった。海には年齢がなかったし、その日から町には昨日が二つあった。