諧玄文学 / Nonsensophy

第6話

『美術館に展示された雨』

読了目安:80秒

ある美術館が、雨を一滴も使わずに雨の展覧会を開催した。第一展示室には濡れた椅子がひとつ置かれ、第二展示室には雨宿りをしている傘の肖像画が飾られていた。最後の部屋は完全な暗闇で、鑑賞者には入場時に一枚のタオルが渡された。学芸員によれば、その部屋には降らなかった雨が展示されているという。来場者の多くは何も見えなかったと感想を述べたが、一人の老人だけが「懐かしい雨だった」と泣き始めた。老人は幼い頃、まだこの世に存在しなかった村で雨に濡れたことがあるらしい。館長はその証言を高く評価し、老人を翌年の特別展に招待した。しかし翌年、老人は額縁になっていた。額縁は展示室の中央に吊るされ、何も囲まないまま三か月を過ごした。閉幕の日、ひとりの少女が額縁の中に顔を入れて、「ここは外ですか」と尋ねた。学芸員が答えようとした瞬間、美術館の屋根が音もなく開き、空から無数の美術館が降り始めた。どの美術館にも入口はあったが、出口だけが展示されていた。

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