ネーミング

名詞 ネーミングNaming

ネーミング(英:naming)とは、物事や概念に名前をつけ、世界観を付与すること。

ネーミングの多層性

ネーミングとは、「文字」「音」「そこから生まれるイメージ」が重なり合う多層的な行為である。

視覚

文字を見た瞬間、人は反射的に"意味"を思い浮かべる。たとえば「光」という文字からは明るさや白・黄色などのイメージを連想できるが、ギリシア語の「φῶς」を見ても、多くの日本人にはただの図形としてしか映らない。文字の意味を理解できるかによって、視覚的な印象は大きく変わる。

聴覚

音だけでも印象は形づくられる。たとえば、姿・顔の見えない「ブーバさん」と「キキさん」を比べると、多くの人は「ブーバさん」のほうを温厚だと感じやすい。さらに、それぞれの体型や顔についても何となくイメージの傾向があるのではないだろうか。(cf.『ブーバ・キキ効果』)。文字情報がなくても、音は無意識に感情を揺さぶる力をもつ。

イメージ

文字と音(シニフィアン)による総合的な作用によって、人間は反射的に意味やイメージ(シニフィエ)を想起したり、無意識に感情が揺れ動いてしまう。 また、以下の条件によっても与えるイメージはまったく異なる。

『ブーバ・キキ効果』

『ブーバ・キキ効果』とは、特定の音(語感)と図形(視覚的形状)との間に連想的な結びつきが生じる心理現象。1929年、心理学者ヴォルフガング・ケーラーが初めて報告した。 2つの図形(一方は丸い、一方は尖っている)に対して、どちらを「ブーバ」でどちらを「キキ」と呼ぶかを尋ねると、ほとんどの人が「丸い図形→ブーバ」「尖っている図形→キキ」と回答をする実験結果が得られた。これは、言語や年齢、性別に関係なく、同様の傾向が見られる。

ネーミングのデザインについて

ネーミングは、その存在自体のイメージを大きく左右する非常に重要な工程である。先述したネーミングの多層性を理解した上で適切に名付けを行えば、企業やサービス、プロダクトの価値を高め、永きにわたってポジティブな印象に与え続けるものとなる。また、人名においては本人の性格や親しまれやすさ、立ち回りのしやすさ、印象のベクトルなどに大きく影響を与えるため、ネーミングは人生を左右するといっても過言ではない。

意識すべきこと①|文字体系

日本においては、主に4つの文字体系が使用され、それぞれにおいて与える印象は異なる。また、ローマ字においては、大文字と小文字の組み合わせ方によってさらに細分化される。

【ひらがな】 やわらかさ・親しみやすさ・和の情緒 【カタカナ】 スタイリッシュ・モダン・くだけた/外来語的なニュアンス 【漢字】 堅実・真面目・誠実 +文字そのものに固有の意味が宿る 【ローマ字(英字)】 すべて大文字(例:IKEA):力強さ・無機質・権威性 頭だけ大文字(例:Google):上品・フォーマル・信頼感・可読性が高い すべて小文字(例:mercari):ミニマル・フレンドリー・軽快・若々しさ ミックス(例:iPhone):遊び心・個性・カジュアル

意識すべきこと②|音の響き

その音がもつ印象をうまく活用すること。 「子音×母音」の組み合わせによって、印象が導かれる。

あ行明るさ・素直・開放感
か行硬質・キレ・メタリック
が行ガツンと重厚・力強さ・ダイナミック
さ行さわやか・疾走感・繊細さ
ざ行雑多・ノイズ・痛々しさ
た行質量感・進展・歯切れの良さ
だ行鈍重・衝撃・土着
な行なめらか・柔和・和風
は行ふんわり・軽やか・空気感
ば行武骨・ボリューム・粘着質
ぱ行ポップ・弾ける・コミカル
ま行まろやか・包容・母性的
や行幽玄・余韻・ミステリアス
ら行爛漫・華麗・楽々
和やか・余白・落ち着き
重み・古雅・おもむき
無・閉じ・沈黙
ゐ・ゑ古典的・レトロ・違和感

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ア段上昇・前向きなエネルギー
イ段軽快・注目させる力
ウ段奥行き・内に秘めた力
エ段フラット・広がりのベクトル
オ段包容・低重心・安定感を与える

意識すべきこと③|呼びやすさ・聞き取りやすさ

名前は呼ばれるほど愛着が深まる。 長過ぎる・複雑すぎる・滑舌が悪い・聞き取りにくい名前は覚えにくく親しみにくい。 ターゲットや用途によっては、日本語と英語の両方で発声しやすいかも確認する。

意識すべきこと④|バイアスの有無

名称に不要な先入観やネガティブな連想を生じないか事前に検証する。 たとえば「太郎」「花子」のように文化圏固有のイメージが強過ぎるケースや、「信長」「諭吉」など歴史上の人物と同じ名称を採用する場合など。 また、外国語に翻訳したときに、意図しない意味として伝わらないようケアすることも大事。

意識すべきこと⑤|絶妙な分かりにくさ

記憶に残るためには、「分かりにくさ」という適度なストレスがあるとよい。 簡単すぎること・ありふれていること・ひねりがないものは、理解へのハードルが低いのと同時に、フックがないため魅力も感じにくい。 普通の人なら見逃してしまうが、特定の人を立ち止まらせるような「専門性」の加減。説明しすぎず、想像力の余白を残した「抽象度」の調整。 これらによる"絶妙な分かりにくさ"の設計もネーミングデザインの上級者向けテクニックである。

関連:オノマトペ

オノマトペとは、擬音語と擬態語を総称した言葉。

擬音語(ぎおんご)

実際の音を模倣した言葉。

擬態語(ぎたいご)

実際の音とは関係なく、状態や動き、感情などを表現した言葉。

日本語はオノマトペが豊富な言語であり、特に漫画では、感情や動きを表現するために多用される。