楽
名詞 らくsukha
楽(らく、梵:sukha)とは、仏教において、求めているものがこれ以上なく、満ち足りている状態。苦(く、梵:duḥkha)の対義。
一般的な定義〔通説〕
仏教における楽は、苦(求めているものが得られない、叶わない状態)対義語であり、安らぎ・充足を指す。
なお「楽」という漢字は、もともと楽器の象形(木の台の上に糸や鈴を張った形)であり、原義は音楽(がく)である。たのしさ・安らぎの意味は、音楽がもたらすものとして、後から派生した。文字の来歴において、たのしさより先に、音があったとされる。
楽は、快楽ではない
快楽は、求めが次々と湧き続ける状態である。ひとつ満たせば、次の渇きが生まれる。その運動は、構造としてはむしろ苦(=叶わなさ)の側に近い。 楽はその逆である。欲望を消した状態ではなく、欲望が満たされ切って、静かになった状態。
楽の先に、遊びと余剰がある
満ち足りた存在の営みは、必然を離れる。生存のため、渇きを埋めるための行為が尽きたとき、それでもなされることは、定義上すべて遊びである。楽は、遊びの入口に置かれた門である。
そして、満ちてなお余るものが、余剰(よじょう)である。楽に達した存在だけが、自らを削らずに分け与えることができる。悟りの項でいう成仏の資源は、この余剰にほかならない。