量子力学
名詞 りょうしりきがくQuantum Mechanics
量子力学(英:quantum mechanics)とは、原子・素粒子など、“世界の最小スケール” の物理現象を扱う力学である。量子力学の登場以降(マックス・プランク、1900年)、それ以前に提案されていたニュートン力学や相対論的力学(特殊相対性理論・一般相対性理論)が古典力学として総称されるようになった。
量子とは
量子(英:quantum)は、物理学において用いられる、様々な物理現象における物理量の“最小単位(概念)”である。 具体例として下記が挙げられる。
原子|atom
化学反応でこれ以上分けられない物質の最小単位。電子・陽子・中性子で構成される。2つ以上の原子が化学結合すると分子(molecule)になる。
電子|electron
原子のまわりを取り巻くマイナスの電荷をもつ粒子。素粒子の一種。
クォーク|quark
原子核を形づくる陽子・中性子を構成する粒子。素粒子の一種。単独では存在できず、常に複数で結びつく。
光子|photon
光のエネルギーの最小単位。電磁気力を媒介する、光や電磁波を構成する粒子。素粒子の一種。質量がゼロで、真空中を光速で移動し、エネルギーと運動量を持っている。
ヒッグス粒子|Higgs boson
“質量とは何か” を説明するために存在するとされる粒子。素粒子の一種。
ニュートリノ|neutrino
ほとんど何にも反応しない電荷ゼロ(中性)の粒子。素粒子の一種。宇宙に無数に存在しながら、ほぼ物質をすり抜けていく幽霊のような性質をもつ。
代表的な性質①『量子化』
物理学における量子化(英:Quantization)とは、古典力学で連続的に扱われていた物理量(エネルギー、運動量など)が、実際には連続ではなく、ある最小単位の離散的(飛び飛び)な値しか取らないという考え方、およびその理論を構築する手続きを指す。
身近な例での理解
量子化の概念は、「連続に見えるものが、実は飛び飛びの最小単位で構成されている」と捉えることができる。
発見と起源
量子化の始まりは、1900年に物理学者マックス・プランクが、当時の古典物理学では説明が不可能だった黒体放射のスペクトルを説明するために導入した仮説による。

代表的な性質②『波動粒子二重性』
波動粒子二重性(英:Wave-Particle Duality)とは、量子がある状況下では「波(波動)」のような性質を示し、別の状況下では「粒(粒子)」のような性質を示すという、互いに異なる二つの性質を併せ持つことを示す量子力学の根幹をなす概念。波と粒の両性質を同時に観測することは不可能とされる。
起源と発見
光の粒子性(アインシュタイン、1905年)
物質の波動性(ド・ブロイ、1924年)
代表的な性質③『観測者効果』
粒子を観測・測定する行為そのものが、測定対象の粒子の状態に影響を与え、変化させてしまう現象。特に量子力学においては、対象となる粒子(電子、光子など)の状態が、観測されることによって重ね合わせの状態から特定の確定した状態へと収束する現象(波束の収縮)を指すことが多い。
波束の収縮(Wave Function Collapse)
量子力学において、粒子の状態は「波動関数」という確率波で記述されるが、観測を行うと、この波動関数が瞬時に観測された特定の状態に変化する(収縮する)。
二重スリット実験
二重スリット実験は、電子などの素粒子を1個ずつ発射して、「どのスリットを通ったか」を観測する実験。観測行為が素粒子のふるまいに影響を与えることを明確に示す実験である。
- 観測しない場合: 干渉縞が出現する(波動性を示す)
- 観測した場合: 干渉縞が出現しない(粒子性を示す)

代表的な性質④『不確定性原理』
不確定性原理(英:Uncertainty Principle)とは、ある特定の二つの物理量(例えば、粒子の位置と運動量)について、両方を同時に、かつ高い精度で決定(測定)することは原理的に不可能であるという量子力学における基本的な原理のひとつである。
量子力学において、粒子の状態は「波動関数」という確率波で記述されるが、観測を行うと、この波動関数が瞬時に観測された特定の状態に変化する(収縮する)。
身近な例での理解
不確定性原理が示すのは、一方の情報を正確に知ろうとすると、もう一方の情報が必ず曖昧になるというトレードオフの関係である。
起源と発見
発見者:ヴェルナー・ハイゼンベルク、1927年
この原理は、古典物理学の決定論(すべての未来は現在の状態から計算可能であるという考え)を打ち破り、量子力学の確率的な世界観を確立する上で決定的となった。

代表的な性質⑤『トンネル効果』
トンネル効果(英:Tunneling Effect)とは、量子力学における現象の一つ。エネルギーの壁(ポテンシャル障壁)が存在するとき、粒子の全エネルギーがその障壁の高さを下回っているにもかかわらず、確率で粒子がその障壁をすり抜ける現象を指す。
古典物理学との違い: 古典物理学では、粒子が障壁を越えるには、粒子のエネルギーが障壁の高さ(運動エネルギー)を上回っていることが絶対条件である。しかし、量子力学では、粒子の波動性によってこの透過が可能となる。
身近な例での理解
トンネル効果は、粒子の「波」の性質と不確定性原理によって説明される、直感に反する現象である。
起源と発見
1928年、ジョージ・ガモフ(George Gamow)、ロバート・ガーニー(Robert Gurney)、エドワード・コンドン(Edward Condon)らによって独立に理論的に予言された。
現代技術への応用
トンネル効果は、理論上の現象にとどまらず、現代の電子技術に不可欠な基盤となっている。

代表的な性質⑥『量子もつれ』
量子もつれ(英:Quantum Entanglement)とは、2つ以上の量子(粒子や光子など)が特別な関係性(相関)を持って結合している状態を指す。どれだけ遠く離れていても、一方の粒子の状態(例:スピンや偏光)を測定し確定させると、もう一方の粒子の状態が即座に確定するという性質を持つ。
アインシュタインはこの現象を皮肉を込めて「不気味な遠隔作用(Spooky action at a distance)」と呼んだ。
起源と発見
下記のプロセスを経て、量子もつれが自然界に実在することが実験的に証明された。
現代技術への応用
量子もつれは、現在の量子情報科学の基盤技術となっている。

確率的世界観(Probabilistic Worldview)
粒子の位置、運動量、エネルギーなどの物理量は、観測されるまで確定した値を持たず、特定の場所や状態をとる「確率」としてのみ記述されるという世界観。これは、波動関数(Wave Function)によって記述される粒子の状態が、特定の値を実現する確率密度を示していることに基づく。
古典的な決定論との対比
量子力学の確率的な世界観は、古典物理学の決定論(Determinism)と根本的に対立する。